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疾患

子犬・子猫を脅かすパルボウイルス感染症

2024.10.31

今日は子犬・子猫で重篤な症状を起こすパルボウイルス感染症について紹介します。

犬パルボウイルス感染症とは

原因として犬微小ウイルス、所謂犬パルボウイルス1型(CPV-1)が知られており、その後重篤な胃腸障害と高い死亡率を引き起こすウイルスとして犬パルボウイルス2型(CPV-2)が発見されました。CPV-2の変異ウイルスは猫や野生動物からも検出されます。

猫パルボウイルスと感染症とは

別名“猫汎白血球減少症”とも言われます。原因は猫パルボウイルス、そして犬パルボウイルス2型(CPV-2)の感染でも発症します。

パルボウイルス感染症の症状

若齢犬・若齢猫で重症度は高くなります。

細胞分裂が盛んな腸管上皮細胞、骨髄前駆細胞やリンパ系組織に感染するので、激しい嘔吐・下痢、白血球減少(500~2000/µL)が見られます。

猫白血病ウイルス持続感染でも汎白血球減少症様症候群が認められますが、重篤な消化器症状を起こさないことが鑑別ポイントです。

動物の妊娠中に感染すると胎児や胎児期の小脳に感染し、流産・死産に繋がります。

パルボウイルスの検出

糞便を用いた抗原検出キットを使用します。PCR検査でも診断可能ですが、生ワクチン接種後は擬陽性を示すので注意が必要です。ワクチン株と野外株を区別して検出できる検査も利用できるようになりました。

パルボウイルス感染症の治療

ウイルスに対する治療薬は無いので対症療法がメインになります。

下痢嘔吐による脱水の改善、電解質の補正のために点滴を行います。

若齢動物では低血糖の予防が重要となります。

腸粘膜バリアが破壊され、好中球低下が起きていると腸管内の細菌による感染が起きる可能性が高くなるので抗菌薬を使用します。

免疫調整のためインターフェロン(インターキャット)投与が犬では効果的ですが、猫での効果は不明とされています。

パルボウイルス感染症の予後

犬で無治療での生存率は9.1%、積極的に治療を行えば80~95%といわれています。6ヶ月齢未満の子猫の生存率は非常に低いといわれています。

最後に

身体が小さく体力が無い子犬子猫では、脱水をおこしやすく食欲不振が命取りとなります。早期から積極的な治療介入が治療にはとても重要です。

また、ウイルスは環境中で1年以上生存することが可能で、次亜塩素酸ナトリウムなど強力な消毒薬でようやく死滅します。排泄物やゲージの取り扱いには注意が必要です。

消化器症状が認められたら早めにご相談くださいね。

獣医師 平林

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