COLUMN
疾患
トリコモナス症
2024.12.26
トリコモナスには多数の種類があり、口腔内に寄生し歯周病に関連するものや、慢性の下痢を引き起こすものがあります。
本日は下痢を引き起こす消化管内寄生虫のトリコモナスについて説明します。
主に集団で生活している保護施設やペットショップからお迎えした子で多い疾患です。
猫で問題となるのはTritrichomonas foetusです。牛の生殖器に感染し、流産などを引き起こしますが、人には感染しません。
犬ではPentatrichomonas hominisが一般的に知られています。Dientamoeba fragilis や猫で問題となるTritrichomonas foetusが分離されることもあります。Pentatrichomonas hominisやDientamoeba fragilisは人からも分離されているので、人獣共通感染症の可能性があります。
診断
糞便検査でトリコモナスを確認できます。
動きが速いのが特徴的です。
治療
メトロニダゾール・チニダゾールなどの駆虫薬を使用します。
猫の腸管内トリコモナス(Tritrichomonas foetus)はメトロニダゾール・チニダゾールには耐性株が存在するなど、完全な排除が困難です。海外ではロニダゾールが有効とされています。
また、腸管細菌叢の崩れが生じていることも多いのでプロバイオティクス(整腸剤)も使用します。
最後に
同じ原虫でも、ジアルジアと異なりトリコモナスはトロフォゾイト(栄養体)のみで、シスト(嚢子)の形態を持たないという違いがあります。熱湯消毒は不要で、次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒が可能です。
消化管内寄生虫は若齢犬・若齢猫の下痢の一般的な原因のひとつです。
下痢や嘔吐が見られた場合は糞便検査をご提案することがあります。
獣医師 平林