BONHEUR ANIMAL HOSPITAL

疾患

子犬で多い犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)

2024.10.17

副院長の平林です。

今回は、私が得意とする小児科でよく見られる疾患についてお話していきます。

急性に発症し、非常に感染力の強い若齢犬の上部呼吸器感染症です。

関連ウイルスは犬アデノウイルス2型、犬ジステンパーウイルス、犬呼吸器コロナウイルス、犬パラインフルエンザウイルスと多岐にわたり、関連する細菌はボルデテラ(Bordetella bronchiseptica.)マイコプラズマ(Mycoplasma spp.)などで一次感染及び二次感染を起こします。

これらの病原体が複合感染を起こすこともあり犬呼吸器複合感染症(CIRDC)とも呼ばれています。特に犬パラインフルエンザウイルス、ボルデテラは病原体として高頻度に分類されます。

犬アデノウイルス2型、犬ジステンパーウイルス、犬パラインフルエンザウイルスはワクチンに入っていますので、適切な時期に接種することがとても重要になりますが、先述したように複合感染を起こすためケンネルコフの発生頻度は低くありません。

感染後3~10日で発症し、急性の咳を認めます。最後に吐き気を催すようなターミナルレッチを伴う咳が多いです。咽頭炎があるとガチョウの鳴き声のようなガーガーという咳(Honking chogh)を認めます。

病原体によってくしゃみや鼻汁・発熱・眼脂を伴い、細菌感染が起きると分泌物の増加から湿性の咳を認めます。

多くの症例で元気食欲は維持されていますが、気管支肺炎へ進行すると元気食欲の低下や呼吸状態の悪化が認められます。

複数の犬・咳をしている犬との接触歴や臨床症状から診断します。

鼻汁及び鼻咽頭スワブを用いてウイルスあるいは細菌を検出することができますが、健康な犬でも検出されることや、病原体によっては排泄期間が短く検出できないことがあります。血清学的検査で各病原体に対する抗体価の測定も可能ですが、ワクチン接種による抗体価の上昇と区別する必要があります。これらより確定診断は困難となります。

肺炎を起こしている場合は胸部X線検査や血液検査で予後を判断する必要があります。軽症例では検査必須ではなく、胸部X線検査で軽度の気管支パターンが認められることがあります。

軽症であれば10日程で自然軽快することが多く、経過観察を行います。ケージの温度を一定に保ち、適度な湿度での管理や安静にすることがとても重要です。

発咳の程度によって鎮咳薬・気管支拡張剤を使用することがあります。粘液性鼻汁など細菌感染が疑わしい場合抗生剤を使用します。
ネブライジングでは薬剤投与だけでなく、気管や気管支における過剰な分泌物を取り除く効果があります。

気管支肺炎に進行した場合、低酸素血症の症例に対しては酸素供給が必要になる場合があります。

肺炎などの合併症が無い場合予後は良好です。症状が数週にわたり続くことがあるので経過を確認しながら治療期間を相談します。

子犬をお迎えした時、環境の変化で免疫力が落ちてケンネルコフを発症することがよく知られています。

子犬は自分の体力の限界が分からないので意外と元気なこともあります。元気だけど、肺音を聞いて「あれ?」胸部X線検査で肺炎像が確認されることもしばしば・・・

飼育環境や温度・湿度についてもご相談いただけます。症状が悪化する、良くならない際は自然寛解を待たず受診してくださいね。

副院長 平林愛里沙

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