COLUMN
疾患
半陰陽の1例
2024.11.21
半陰陽という珍しい症例について紹介します。
半陰陽について
半陰陽とは、性分化異常の先天性異常です。
性腺の性と染色体の性によって分類されます。
雄性仮性半陰陽 | 雌性仮性半陰陽 | 真性半陰陽 | |
染色体 | オス | メス | |
性腺 | 精巣 | 卵巣 | 精巣・卵巣 |
外見 | メス | オス | 異常 |
画像検査での生殖器の確認や性ホルモン濃度測定、性腺刺激試験など検査内容は様々ですが、多くは外科介入時の肉眼的な所見及び病理組織学的評価に基づき診断します。
性腺の発達異常がある場合、生殖能力は期待できません。異常な性腺は腫瘍化リスクが高いため半陰陽の疑いが出た段階で摘出を勧めます。
症例紹介
特に何も症状のない、健康診断にて。見た目はおんなのこですが、陰核の腫大とその中に硬い組織が触知され、X線検査では陰核に骨様組織が確認されたので半陰陽を疑いました。(正常な雄犬のペニスには陰茎骨というものが存在します。)
元々避妊手術を希望されていたのもあり、ホルモン値測定などは行わず開腹し、状況を見ながらそこにあるものを摘出することにしました。
まず正常な卵巣子宮と精巣の模式図を示します。
犬の子宮は双角子宮と言って、子宮体部から子宮角がY字に伸びており、その先に固有卵巣索でつながった卵巣があります。
精巣には隣接する精巣上体という器官が連続しています。
今回摘出された臓器の一部です
手術では本来卵巣にある場所の1つに卵巣様構造物が、対側は精巣上体のようなものもあり精巣に見えました。写真では切れていますが、それらに付随する子宮角・子宮体も確認できました。
これは珍しい真性半陰陽(精巣と卵巣を持つ)なのか?!診断は一旦病理検査結果を待つことに。
陰核の切除は排尿に問題ないことや本人が気にしていないことから、相談の上実施しないことになりました。
病理組織検査結果
卵巣の場所にあったものはどちらも卵巣の組織は観察されず、精巣実質組織が観察されたそうです。卵巣のような方では卵管采・卵管様構造物はあったそうです。(卵巣に付属する器官で卵巣ではありません。)
子宮角~子宮体部では正常の子宮組織が認められたそうですが、精巣上体があった見た目が精巣に近い方では子宮角に並行する精管(もしくはガートナー管)が認められたそうです。
病理組織検査から、性腺はどちらも精巣なので雄性仮性半陰陽という診断になりました!
獣医師 平林