BONHEUR ANIMAL HOSPITAL

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総合診療科

2025.06.24

「熱中症」

暑くなるこれからの季節では

非常に危険で注意が必要な病気です。

ワンちゃんの場合は炎天下でのお散歩が
発症リスクを高めるとされています。

ですが、室内だから安心安全というわけでもないんです。

暑いと人は汗を流しますよね?

これは発汗によって体温を下げようとしているんです。

ところがワンちゃんが汗だくになっている所は
見たことがありません。

では一体どうやって暑さを凌いでいるのでしょうか?

実は人もワンちゃんも身体の熱を逃すのに
「4つの仕組み」を用いています。

①熱伝導

体に接している物体に熱が移動していく現象です。

真夏日にワンちゃんが冷たい床で寝そべっている所を見かけませんか?あれは熱伝導によって体温を下げようとしているんですね。

②対流

体表面より温度の低い気体や液体が流れることで熱を奪っていく現象です。 

エアコンはこの対流を利用して部屋の温度を下げています。

冷蔵庫を開けた時にひんやり感じるのも対流の一つです。

③輻射(ふくしゃ)

物体を介さずに熱がエネルギーとして放出される現象です。

ピンとこないかもしれませんが、ストーブや電子レンジなんかがこれを利用しています。

太陽光が暖かく感じるのも、太陽からの輻射に
よるものなんです。

4.蒸散

夏になるとアスファルトに水を撒いてる人がいますよね?

あれは単に涼しげなイメージを演出しているわけではないんです。

撒いた水が蒸発する時に、アスファルトから熱を奪うことで地面の温度を下げているのです。

同じことが人や動物の体でも起こります。

人は全身で発汗し、ワンちゃんは足裏と鼻で発汗を行います。

この「伝導」「対流」「輻射」「蒸散」の4つを総称して
【熱放散】と呼びます。

一般的に人もワンちゃんも熱伝導は全体の数%くらいです。

約70%を対流や輻射、残りを気道からの蒸散に頼っていると言われています。

この熱放散は気温が上がるほど質が落ちていきます。

暑い日にお散歩をして体温が上がるとどうなるでしょうか?

熱放散が上手く働かないので、身体に熱が
どんどん溜まっていきます。

30分程度のお散歩でも熱中症になりかねません。

そして、外気温が体温を上回ると

伝導、対流、放射は全く機能しなくなります。

ワンちゃんの体温は38度前後なのでそうそう気温が上回ることはありませんが

真夏の車内はエンジンを止めてから約30分で45℃まで到達します。

冷房ガンガンにつけておけば大丈夫??

例え冷房をガンガンにつけていても冷たい空気が循環していなかったり、直射日光がずっと当たっている場合は大変危険です。

熱中症なりかけのワンちゃんは、持続的に

ハァハァ息が荒くなったり、涎を垂らす、身体が熱くなる、目が充血したり口の粘膜が真っ赤になったりします。

さらに重症化すると吐血や血便、呼吸困難を引き起こすこともあります。

 室内での熱中症の予防法

室温は22℃〜25℃くらい、湿度は50%〜60%でキープし直射日光に注意します。

特にケージに入ってる場合は日光から逃げることが出来ないので十分に気をつけてください。

空気を循環させるために風通しを良くします。冷房機器を使用する際は直接当たらないよう気をつけます。

飲み水は切らさないように注意する。

お外での熱中症の予防法

暑い日中にお散歩しない。

朝方か日が沈むころが良いです。お散歩行く前に地面(特にアスファルト)に手を触れて熱くないか確認しましょう。

あまりにも熱いと肉球が剥がれてしまう可能性もあります。

長時間のお散歩を控える。

車内でお留守番させない。

激しい運動時は適度に休憩させる。

熱中症を疑う時の対処法

大前提として持続的に息が荒かったり身体がとても熱くなっている場合は直ぐに病院へ受診してください!

大丈夫だろうと様子見を行うことで手遅れになってしまうことが非常に多いです。

病院に向かうまでの間や、直ぐの受診が難しい場合は応急処置を行います。

先ずは日陰に移動させてください。

可能なら水を飲ませますが、意識が落ちている場合は誤嚥の可能性があるので無理に飲ませなくても良いです。 

その後身体を冷却します。

これが非常に大切です!

常温の水を体表にかける、若しくは水で濡らしたタオルで全身を覆います。

扇風機で送風し、気化熱を利用して徐々に冷却してください。

体表の水分は外の暑さも相まって時間と共に乾いてくるので適度に水で濡らしたり、タオルを交換してください。

凍らせた保冷剤をタオル等で包み、太い血管のある首、鼠径部や脇の下に挟みます。

●やってはいけないこと

氷水に浸ける、キンキンに冷えた水をかけるのは止めて下さい。

血管が締まって効果的な熱放散ができなくなります。

また保冷剤を直接身体に当てるのも低温やけどの可能性があるので止めてください

ワンちゃんは人と違いお尻で体温を測ります。偶に脇で測る方もいらっしゃいますが正確性に欠けますのでご注意ください。

熱中症は思っているよりも重症化が早く、早急な治療が必要となります。

疑った際は直ぐに病院へご連絡ください。

ワンちゃん達は暑さに弱いので熱中症の予防がとても大切です。

気温も上昇し暑い日が続きますが、安全対策をしっかり行なって夏を楽しく乗り切りましょう!

愛玩動物看護師 窪田