膝蓋骨脱臼(パテラ)について①
総合診療科
2025.10.30

膝蓋骨の役割
膝蓋骨は膝蓋靭帯で固定されており膝の曲げ伸ばしの際に大腿骨遠位の滑車溝を上下に滑ります。膝蓋骨は筋肉の力を効率的に伝え、膝の動きを滑らかにする役割があります。
膝蓋骨脱臼とは
大腿骨遠位の滑車溝にはまっている膝蓋骨が滑車稜を乗り越えて本来の位置からずれて (脱臼)しまう状態で、パテラとも呼ばれます。足の内側に脱臼すれば内方脱臼、外側に脱臼すれば外方脱臼です。
トイプードルやポメラニアン、チワワなど小型犬で多く見られます。

左図)正常な左ひざの模式図
右図)内側に膝蓋骨脱臼を起こした左ひざの模式図
脱臼の程度によって1~4までのグレードに分けられます。

グレードと臨床症状は必ずしも一致しません。破行の程度や脱臼頻度も重要な指標です。治療開始のタイミングや治療方法などはグレードだけでなく臨床症状も併せて相談しましょう。
膝蓋骨脱臼の原因
生まれつき膝蓋骨や滑車溝の形、靭帯・筋肉・骨の位置関係に異常があり脱臼しやすい素因をもっている先天性と、急な強い力がかかる事で素因がないにもかかわらず脱臼が起きてしまう後天性があります。
後天性の場合は突然の強い痛みや違和感を訴える事が多いですが、先天性の多くは脱臼する生活に慣れているため症状が現れづらく、病院を受診して初めて気づくことも少なくありません。
子犬さんのパテラ
成長期の子犬さんは、パテラが急に悪化する可能性がある時期です。なんともなかったのにパテラになってしまう子がいたり、2、3ヶ月でグレードの進行が見られる子がいます。
逆に、軽いパテラがあっても正しい運動を行い、筋力をつけることで成犬になった時に脱臼しづらくなる子もいます。
大切なのはこまめに膝の状態を見て、その時期にあった治療を行うことです。ワクチンプログラムや定期検診の際にチェックをしましょう。
そして、普段の生活について。膝に負荷のかかる後ろ足立ちはなるべく避けるようにしましょう。階段などは抱っこする、遊ぶときは飼い主さんが立ったままではなく、座って目線を合わせてわんちゃんが2足歩行しなくても良いようにしましょう。急な旋回も負担がかかるので、4足歩行での直線運動が理想的です。
お家で遊ぶ時、お散歩の時、ちょっと意識してみてください。
次回の私のコラムはパテラの治療について!を予定しています。
獣医師 平林